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「ある夜の物語」 [エッセー]

星 新一「ある夜の物語」の粗筋です

 クリスマスイブを一人寂しく過ごしている青年の狭い部屋に突然サンタクロースが現れました。「なにかおくりものをあげます。お望みのものを言って下さい」と言うサンタクロース。しかし青年はそれを辞退し、なおりにくい病気で寝たきりの女の子にその権利を譲ってしまいます。青年は、これからサンタクロースのやってくれることを想像し、楽しさを覚えました。
 病気の女の子のところに現れたサンタクロース。「欲しいもの、望みのこと、なんでも言ってごらん。かなえてあげるよ」といいます。色々考える女の子ですがサンタクロースに尋ねました。「でも、なぜあたしのところへ来たの」と。サンタクロースは、「さっきある人のところへ行ったら此処へ行くようにすすめられた」と答えます。女の子は自分が見捨てられた存在ではなかったことに驚きます。そして、「もっと気の毒な人がいるはず」。「金貸しのおじさんにはきっとお友だちがいないんじゃないかしら」と言って、権利を金貸しのおじさんに譲ってしまいました。女の子は、世の中のどこかにサンタクロースの権利を回してくれた人がいてくれたことだけで充分でした。
 金貸しの中年男の前に現れたサンタクロース。「なにかお望みのことがありますか」と言います。中年男は「ありすぎるぐらいだ・・・」と考えますが、こんな貴重な権利を譲ってくれた人がいたということに驚きました。そして、自分が頭の中で巨額な数字を並べたことが恥ずかしくなりました。そこで、金では買えない親しい友人が欲しいと思いましたが、サンタクロースをここへ回してくれた人が、社会のどこかに確実にいるということに気が付きました。金貸しの中年男は「危険な企みをやっている一団のボスの荒涼とした心を慰めてやってくれ」と言って、サンタクロースの権利を譲ってしまいました。サンタクロースが消えた後、男は帳簿をしまい、この楽しい気分のまま眠り、夢の中でもう一回サンタクロースに会おうと思いました。
 サンタクロースは、国と国を対立させ戦争に発展させようと企んでいる男の前に現れました。「おれの望みは世界の破滅だ」しかし、男のその決意は急激にうすれていきました。破滅させようという世界のなかに、サンタクロースをここに回してくれた人が含まれているからです。なかなか望みを決められない男にサンタクロースは、「もうまもなく時間ぎれです。来年あらためて出なおしましょうか」と言いました。すると男は「来年はべつな人のところへ行ってくれ。あなたがここに出現してくれただけで満足だ。さよなら」と言いました。
 サンタクロースは雪に閉ざされたある場所の、自分の家へと帰ってきました。そして、「きょう最も楽しさを味わったのは自分ではないか」と思いました。

サンタクロース.jpg
画像はフリー素材です


さて、この年齢になるとクリスマスは特に感動するということもなく坦坦と過ぎて行きました。それでも、目の前にサンタクロースが現れたら何をお願いしようかなどと、妄想にふけったりする子供じみた私も確かに存在します。信仰心は無くともキリストの誕生祝は私の心の中にも溶け込んでいるのかもしれません。


一夜明け指で聖菓のつまみ食い 粋田化石



【クリスマス】 降誕祭 聖樹 聖夜 聖夜劇 聖菓 サンタクロース  (季冬)
十二月二十五日、キリストの誕生日。ただし実際にいつ生まれたかは不明。ヨーロッパにおいて土俗の冬至の祭と習合したもの。前夜をクリスマスイブといい、子供たちはサンタクロースに贈り物を入れてもらう靴下を枕元に吊り下げて寝る。翌二十五日、教会では聖樹を飾り、聖歌を歌ってキリストの生誕を祝う。クリスマスの頃の都会は華やかなイルミネーションに彩られ、町も人も活気に満ち、クリスマスソングが流れて浮き立つようである。家庭でもクリスマスツリーを飾ったり、プレゼントを交換したり、すっかり生活に溶け込んでいる。(角川合本俳句歳時記第四版)





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