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一月七日 [俳句]

 一月七日は五節句の一つである人日(じんじつ)でした。ちなみに五節句とは、人日(じんじつ)正月7日・上巳(じょうし)3月3日・端午(たんご)5月5日・七夕(しちせき)7月7日・重陽(ちょうよう)9月9日の五日です。また、正月の一日から七日までの七日間はそれぞれ、元日は鶏日(けいじつ)・二日は狗日(くじつ)・三日は猪日(ちょじつ)・四日は羊日(ようじつ)・五日は牛日(ぎゅうじつ)・六日は馬日(ばじつ)・七日は人日(じんじつ)と呼ばれています。

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人日や慶び末のごみ袋 粋田化石


松の内も終わり様々な正月用品も最後はゴミになりました、という句です


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 その一月七日に俳優のシドニー・ポワチエが亡くなりました。映画『野のユリ』で黒人として初めてアカデミー主演男優賞を受賞した方です。

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七種の空へポワチエ招かれて 粋田化石

七種はもちろん新年の季語です。『招かれざる客』(スタンリー・クレイマー監督 1967年)というポワチエが出演した映画の題名を拝借しました。七種は日本の風習ですが、『招かれざる客』の英語の題名は『Guess Who’s Coming to Dinner』ですので、まんざら縁がないこともなさそうです。

【人日 じんじつ 】  人(ひと)の日(ひ)  (季新年)
一月七日。江戸時代は五節句の一つとされた。古来、宮中では白馬(あおうま)の節会(せちえ)が行われ、七種粥を食べて祝った。「人日」は中国前漢時代に、七日に人を占ったことからの名。↓七日 ・ 七種 (角川合本俳句歳時記第四版)
人の日と思へばをしき曇りかな 梅室
人の日の古きことする伏家かな 蕉雨
人日の人影さして竹そよぐ 菅裸馬
人日のこころ放てば山ありぬ 長谷川双魚
人日の女ばかりの集りに 星野立子
人日の椀に玉子の黄味一つ 野澤節子
人の世に人日といふ日のありぬ 粟津松彩子
人日や江戸千代紙の紅づくし 木内彰志
耳さとくゐて人日の雑木山 菅原鬨也
人日の納屋にしばらく用事あり 山本洋子
人日の暮れて眼鏡を折り畳む 岩城久治
人日の赤き実こぼす床の花 櫨木優子


【七種 ななくさ】 七草  (季新年)
五節句の一つ、七種の節句の略。正月七日に行われ七種粥(がゆ) を食べる。↓春の七草 (角川合本俳句歳時記第四版)
七くさや袴の紐の片むすび 蕪村
七種の過ぎたる加賀に遊びけり 深見けん二
七種や沖より雨の強まり来 貞弘衛
七草の土間の奥より加賀言葉 井上雪
波の上に七草の雨のこりけり 大峯あきら
七草や空うつくしき飛驒の国 遠藤若狭男
七草や霙まじりの風も吹き 対中いづみ
川見つつゆくななくさの雨の中 岡本眸

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DVD化 [俳句]

 昨年の九月六日に亡くなったジャン=ポールベ・ルモンド。

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『モラン神父』Blu-ray


 最近になって出演映画のBlu-ray discが何枚か発売されています。そして先日、日本ではまだDVD化されていなかった『あの愛をふたたび』(クロード・ルルーシュ監督 1969年)の国内初DVDが発売されました。

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『あの愛をふたたび』DVD


 ベルモンドは自らのプロダクション「セリトプロ」で作品を管理していて、上映やdisc化のための権利許諾が難しく、またそのための料金が高かったのだそうです。フランスでは大スターのベルモンドも日本では忘れられ気味ですので、売れるかどうか分からない作品に高い料金は払えないのかもしれませんね。また『あの愛をふたたび』の監督クロード・ルルーシュも同様に、自ら設立したプロダクションである「フィルム13」で作品を管理させているそうなので、やはりdisc化が難しかったのかもしれません。
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『いぬ』Blu-ray


 ただ、理由は分かりませんがこうしてベルモンドが出演した作品がBlu-ray化・DVD化されるのは嬉しいかぎりです。

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『雨のしのび逢い』Blu-ray


Jeanne Moreau白黒に更く三日かな 粋田化石


三日が新年の季語で一月三日のことです。Jeanne Moreauはジャンヌ・モローのこと。『雨のしのび逢い』(ピーター・ブルック監督 1960年 白黒作品)の主演女優です。
ジャンヌ・モローだ白黒に更けてゆく一月三日だなー、という句です。

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『暗くなるまでこの恋を』Blu-ray


Blu-rayベベルに一日果つる冬 粋田化石


ベベルはベルモンドの愛称。
Blu-rayでベルモンドの作品を見て冬の一日(ひとひ)が終わる、という句です。

【三日 みつか】  猪日(ちよじつ)  (季新年)
一月三日。官公庁などはこの日まで業務を休むことが多い。(角川合本俳句歳時記第四版)
三日はや雲おほき日となりにけり 久保田万太郎
黒猫の眼が畑にをる三日かな 村上鬼城
誰も来ぬ三日や墨を磨り遊ぶ 殿村菟絲子
石舞台めぐる三日の畦匂ふ 古賀まり子
三日はや汐木焚く炎を高く上げ 児玉輝代
三日はや釘箱さがす月あかり 中山純子
母のもの仰山干して三日かな 山尾玉藻
三日はや木綿のやうな風とゐる 野木桃花
無為にして首回したる猪日かな 矢島渚男

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明けましておめでとうございます [俳句]

明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願いいたします

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駅伝がめでたさ攫(さら)ふ雑煮かな 粋田化石

家族に駅伝好きがいて、折角の目出度い雑煮の席も駅伝が気になるようです。


【雑煮 ざふに】 雑煮祝ふ 雑煮餅  雑煮椀(ざふにわん)  (季新年)
雑煮は土地によってさまざまであるが、年越しの夜、神に供えたものを下ろして食べた風習の名残であろう。雑煮の餅は関西では主に丸餅を使い、焼かずに煮るが、関東では切り餅を使い、焼いてから汁の中に入れることが多い。また餅を煮るのに、関西では汁は味噌仕立て、関東ではすまし仕立てが主であるが、必ずしも一定ではなく、小豆(あずき)汁を用いる地方もある。具は大根・人参・ 牛蒡(ごぼう)・里芋など。(角川合本俳句歳時記第四版)
立山の日の出を祝ふ雑煮かな 金尾梅の門
浦人の雑煮の膳にさす日かな 岡本癖三酔
丸餅のどかつと坐る雑煮かな 草間時彦
井戸神の遠くに見ゆる雑煮かな 斎藤夏風
人参の捻(ね)ぢ梅うれし京雑煮 高島筍雄
空たかき風ききながら雑煮膳 臼田亜浪
鮞(はららご)のみちのくぶりの雑煮祝ふ 山口青邨
めでたさも一茶位や雑煮餅 正岡子規
朱の椀に白妙一つ雑煮餅 粟津松彩子
父の座に父居るごとく雑煮椀 角川春樹

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大晦日 [俳句]

2021年大晦日
千葉県東部地方は朝方に雪が降っていました。もちろん積もるということはなく、穏やかな大晦日になりました。
本年最後の『だくだく日記』は最近詠んだ俳句で締めようと思います。


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寅さんの後にと誓ふ春支度 粋田化石


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ぬるま湯へ万年筆の大晦日 粋田化石


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年のくれ積読(つんどく)の背の褪(さ)め行きぬ 粋田化石


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霜柱ぬるき音する牛の尿(しと) 粋田化石


皆さま一年間有難うございました 良いお年をお迎えください
来年もよろしくお願いいたします
粋田化石

【年用意 としようい】  春支度(はるじたく)  (季冬)
新年を迎えるためにいろいろ支度を整えること。家の中の煤掃(すすはき)・畳替、外回りの繕い、正月用の買い物、松飾や注連飾(しめかざり)の手配、年木取(としぎとり)、春着縫いなどがそれに当たる。(角川合本俳句歳時記第四版)
小半日山の出入や年用意 方水
年用意靄あたたかき日なりけり 久保田万太郎
木がくれにうぶすなともる年用意 伊東月草
年用意てのひらつかふこと多し 小原啄葉
山国にがらんと住みて年用意 廣瀬直人
夢殿へ白砂敷き足す年用意 山田孝子 
子らの間に坐つて居りて春支度 長谷川かな女

【大晦日 おほみそか】  大三十日(おほみそか)   大年(おほとし)   大年(おほどし)  大つごもり  (季冬)
十二月の末日。旧暦・新暦いずれにも用いられる。晦日もつごもり(月隠 つきごもりの変化したもの)も月の末日の意で、一年の終わりであるため、大の字を添えて大晦日・大つごもりという。(角川合本俳句歳時記第四版)
大晦日定なき世の定かな 西鶴
父祖の地に闇のしづまる大晦日 飯田蛇笏
漱石が来て虚子が来て大三十日 正岡子規
大年の夕陽当れる東山 五十嵐播水
大年の法然院に笹子ゐる 森澄雄
大歳の暮れてゆく山仰ぎけり 茨木和生
大年の夢殿に火のにほひかな 井上弘美
またたきておほつごもりの燈なりけり 七田谷まりうす

【年の暮 としのくれ】  歳暮(さいぼ)   歳暮(せいぼ)   歳晩(さいばん)   歳末(さいまつ)  年末 年の瀬 年の果  年(とし)暮(く)る 年詰まる  (季冬)
一年の終わり。街は歳末売出しで賑わい、家庭では新年を迎える用意に忙しい。すべてが慌ただしく、活気を帯びてくる。(角川合本俳句歳時記第四版)
年暮ぬ笠きて草鞋(わらぢ)はきながら 芭蕉
旧里(ふるさと)や臍(へそ)の緒に泣く年の 芭蕉
去ね去ねと人にいはれつ年の暮 路通
ともかくもあなた任せのとしの暮 一茶
いさゝかの金欲しがりぬ年の暮 村上鬼城
藁苞を出て鯉およぐ年の暮 宇佐美魚目
はらわたの紆余曲折を年の暮 中原道夫
山が山押して夜の来る年の暮 和田耕三郎
思はざる道に出でけり年の暮 田中裕明
歳晩やひしめく星を街の上 福永耕二
歳晩や淀の川波岸より暮る 貞弘衛
歳晩の水を見てゐる橋の上 加藤耕子 
年の瀬や浮いて重たき亀の顔 秋元不死男
山の背に雲みな白し年の果 原裕
町工場かたことと年暮るるかな 星野石雀
喪の花輪すぐにたたまれ年つまる 菖蒲あや

【霜柱 しもばしら】  (季冬)
地中の水分が寒さのため凍って、細い柱状の固まりになり地表の土を押し上げるもの。関東ローム層のような湿気を含む柔らかな土質に生じる。日蔭の気温が低いところでは、日中も溶けず何日も重なって成長し、数十センチにも及ぶものもある。(角川合本俳句歳時記第四版)
霜柱倒れつつあり幽かなり 松本たかし
霜柱伸び霜柱押し倒す 右城暮石
霜柱俳句は切字響きけり 石田波郷
霜柱はがねのこゑをはなちけり 石原八束
戦没の友のみ若し霜柱 三橋敏雄
石ひとつすとんと沈め霜柱 石田勝彦
かつて見しごとき白昼霜柱 田中裕明
あたらしき墓のまはりの霜柱 藺草慶子


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名月 [俳句]

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 九月二十一日は旧暦の八月十五日、一年中で一番美しいとされる名月の日です。しかも、国立天文台の情報によると今年は満月と中秋の名月が八年ぶりに重なりました。
 月は約15日周期で新月から満月に、そして満月から新月になります。したがって、新月から15日目に当たる夜(旧暦の十五日)が十五夜・満月と考えられていました。しかし、実際には月の満ち欠けは季節によって左右され、新月から満月になる日数は13.9日~15.6日(平均は14.76日)とかなり差があります。そのために十五夜の前後に満月になることも多く、十五夜が必ずしも満月になるとは限らないそうです。

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名月に噯あやまるコカコーラ 粋田化石


 噯(おくび)は曖気(あいき)・げっぷのことです。名月ですので昇りたての黄色い月の写真を撮りたかったのですが、私はとある道の駅に車を止めてコーラを飲みながら黄色い月を眺めていました。その時にげっぷが二回。月に謝ったという訳です。

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名月や出くわす庭の洗い熊 粋田化石


 我が家の周辺には野生のアライグマが生息していて頻繁に出くわします。月を見に庭に出たらアライグマに出会ったという句です。空を見て月が二つ出ていれば狸だったのかもしれませんが、月は一つでしたので出くわしたのはアライグマです。


【 名月 めいげつ 】  明月(めいげつ) 望月(もちづき) 満月 今日の月 月今宵(つきこよひ) 三五の月 十五夜 芋名月  (季秋)
旧暦八月十五日の月である。一年中でこの月が最も澄んで美しいとされる。秋草や虫の音、夜露や秋風など、風物のたたずまいが一層月を明澄にする。穂芒(ほすすき) を挿し、月見団子や新芋などその年の初物を供えて月をまつるのは、収穫を祈る農耕儀礼の遺風である。↓良 (角川合本俳句歳時記第四版)
しみ々と立ちて見にけりけふの月 鬼貫
名月や池をめぐりて夜もすがら 芭蕉
名月や畳の上に松の影 其角
名月をとつてくれろと泣く子かな 一茶
名月や笛になるべき竹伐らん 正岡子規
名月や故郷遠き影法師 夏目漱石
名月や門の欅も武蔵ぶり 石田波郷
名月や洗ひ伏せたる日々のもの 村松紅花
満月や耳ふたつある菓子袋 辻田克巳
満月の闇分ちあふ椎と樫 永方裕子
けふの月長いすゝきを活けにけり 阿波野青畝
十五夜や母の薬の酒二合 富田木歩
十五夜の雲のあそびてかぎりなし 後藤夜半

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昭和の車 [俳句]

 BS朝日に『昭和の車といつまでも』という番組があります。同じ車に三十年以上乗り続ける持ち主を訪ねて、その人と所有する車を紹介します。私はその番組が好きでよく見ているのですが、ある日いつものようにその番組を見ているときに傍にいた息子が「この人優しそうな顔をしている。」と言いました。
 なるほど、息子に言われてそうゆう視点で見てみると、確かに同じ車に三十年以上乗り続けるドライバーたちは皆さま優しく素敵な顔をされています。私は車だけ見て人は見ていなかったのですね。そうして更に気づいたのですが、その古い車を整備・修理してくれる整備士たちも素敵な表情をしていました。古いものを大切にされる方のお顔はどこか違うのですね。

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三十年を一つハンドル巡る秋 粋田化石


 三十年(みそとせ)の間同じハンドルを握ってまた秋が巡ってきた、という句です。ハンドルなので巡るにしてみました。

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三角窓佛顔にも素風かな 粋田化石


 まだ自動車にダクトや強制送風ファンがなかった時代、自動車についている小さな三角窓を開閉して室内の換気を行っていました。
 素風というのは色の無い風、つまり秋の風のことです。秋らしい晴れた日、古い車の三角窓の奥の優しい顔にも秋の風が吹いているという句です
写真がないと自動車の三角窓だとわからない句でした。


【秋風 あきかぜ】  秋風(しうふう)  秋の風  金風(きんぷう)  素風 色なき風  爽籟(さうらい)  (季秋)
秋の訪れを告げる「秋の初風」から、晩秋の蕭条(しようじよう)とした風まで、秋の風にはしみじみとした趣がある。秋風は古来西風とされてきたが、実際には特に定まった方角はない。金風・素風は、陰陽五行(ごぎよう) 説で、秋は五行の金にあたり、色は白を配するところからきた語。色なき風は華やかな色が無い風の意で、漢語である「素風」を歌語にしたもの。(角川合本俳句歳時記第四版)
秋風の吹きわたりけり人の顔 鬼貫
あかあかと日は難面(つれなく)も秋の風 芭蕉
石山のいしより白しあきの風 芭蕉
物言へば唇寒し秋の風 芭蕉
秋風やしらきの弓に弦はらん 去来
十(とを)団子(だご)も小粒になりぬ秋の風 許六
釣鐘に椎の礫や秋の風 几董
淋しさに飯をくふなり秋の風 一茶
あきかぜのふきぬけゆくや人の中 久保田万太郎
死骸(なきがら)や秋風かよふ鼻の穴 飯田蛇笏
秋風や模様のちがふ皿二つ 原石鼎
ひとり膝を抱けば秋風また秋風 山口誓子
秋風や殺すにたらぬ人ひとり 西島麦南
吹きおこる秋風鶴をあゆましむ 石田波郷
秋風や柱拭くとき柱見て 岡本眸
秋風を二三歩追へり見送れり 神蔵器
どこからも川現はるる秋の風 廣瀬直人
髑髏みな舌うしなへり秋の風 高橋睦郎
もういちど吹いてたしかに秋の風 仁平勝
檻の鵜も鵜籠も秋の風の中 島谷征良
肘あげて能面つけぬ秋の風 小川軽舟
籠らばや色なき風の音聞きて 相生垣瓜人
山荘のけさ爽籟に窓ひらく 山口草堂

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圓生忌 [俳句]

ブログの更新を再開しました。

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「新米が馬鹿うまでげす」圓生忌 粋田化石

 以前にもこの記事で書いたことがありますが、落語家の六代目三遊亭圓生師匠は1900年(明治33年)の9月3日に生まれて、1979年(昭和54年)の9月3日に亡くなられました。落語中興の祖と言われ、現在止め名(野球でいう永久欠番)になっている三遊亭圓朝が亡くなったのが1900年の8月11日ですので、まるで圓朝の生まれ変わりのようです。
さて、私が落語好きになるきっかけにもなった師匠ですが、私は圓生師匠の噺(はなし)を生で聞くことはかないませんでした。

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 生前TVで拝見する師匠は「ばか旨(うま)」、「○○でげす」という古い言葉を使っておられました。そんな圓生師匠の言葉を真似て新米を詠んだのが最初の句です。
実は、六代目圓生師匠の落語の音源として全36巻のカセットテープの全集を持っていたのですが、カセットテープの再生が出来なくて長らく眠っていました。ところが最近息子からラジカセをもらい聞くことが出来るようになりました。嬉しいかぎりです。
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夜食かな圓生わきで茶を啜る 粋田化石


圓生師匠は座布団の横にお茶を置いて高座でよくお茶を飲んでおられました。お茶を置く置かないは個人の自由だそうです。映像で見ても録音で聞いてもかなりの頻度でお茶を飲んでいます。夜なべの時、夜食をとりながら圓生師匠の落語を聞いていたら、師匠の茶を啜る音が聞こえたという句です。夜食は秋の季語です。ちなみに、現在では十代目の柳家小三治師匠がよくお茶を飲まれています。

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【 夜食 やしよく】(季秋)
夜なべをすると空腹を覚えるので軽い食事を取ったりする。現在は残業している会社員や夜遅くまで勉強している受験生などがとる軽食をも指す。(角川合本俳句歳時記第四版)
所望して小さきむすび夜食とる 星野立子
夜食とる後姿の足重ね 福田蓼汀
あたたかき夜食の後の部屋覗く 能村登四郎
夜食には夜食の贅のありにけり 高浜朋子

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啓蟄 けいちつ [俳句]

今年は三月五日が啓蟄でした。啓蟄は二十四節気の一つで、冬ごもりをしていた虫が地中から這い出てくるころを言います。

今回は『啓蟄』の句です。

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啓蟄や外はマイクロシーベルト 粋田化石


シーベルト(Sv)は被曝による人体への影響の度合いを表す単位です。
虫たちが冬ごもりをしている地中の外には放射能という句です。今年は東日本大震災大震災から十年目にあたりますので、こんな句を詠んでみました。


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啓蟄や這い出る穴も無き夕べ 粋田化石


虫には啓蟄でも、私には這い出す穴も無いという句です。


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命の火啓蟄に消ゆ松の菰(こも)粋田化石


松の木の腹巻き(菰巻き・藪巻)を燃やしている映像を見ました。あの中にはもしかしたら松食虫の幼虫がいて、蠢きだす前に灰になっているかもしれません。
ちなみに、菰巻きは冬の季語です。


【 啓蟄けいちつ 】  (季春)
二十四節気の一つで、新暦三月五日ごろにあたる。暖かくなってきて、冬眠していた蟻・地虫・蛇・蛙などが穴を出るころとされる。↓蛇穴を出づ ・ 地虫穴を出づ (角川合本俳句歳時記第四版)
啓蟄のつちくれ躍り掃かれけり 吉岡禅寺洞
啓蟄の雲にしたがふ一日かな 加藤楸邨
啓蟄の鳥語すずろに美しく 後藤夜半
啓蟄の蚯蚓の紅のすきとほる 山口青邨
啓蟄の蛇に丁々斧こだま 中村汀女
水あふれゐて啓蟄の最上川 森澄雄\
蟄や墓原雨を吸ひて飽かず松崎鉄之介
啓蟄の土著けて蟻闘へり 鷹羽狩行

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二月は逃げる [俳句]

「一月は行く、二月は逃げる」などと言いますが、あっという間に二月が終わってしまいます。俳句には『二月尽 にぐわつじん』という季語があって、丁度今頃の時候を表現しています。
今日は「二月尽」の俳句です。

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二月尽婀娜(あだ)な流木横たはる 粋田化石


流木というと冬の心象がありますが、「婀娜」つまり艶めかしく色っぽい形の流木だと少し暖かく感じませんか?


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二月尽三分長きカップ麺 粋田化石


最早冬ではないけれど春というには早いこの時期。あっという間に二月が終わり三月が来ます。そんな時期とセッカチに流れる時間の中で、相変わらずにカップ麺の三分が待てない私です。


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舌垂らし斜に犬行く二月尽 粋田化石


二月も終わりになると暖かい日もあり、そんな日は犬も舌を垂らしています。飼い主の行く方向と飼い犬の視線が一致していないないのでしょう。犬は斜(はす)に歩いています。



【 二月尽 にぐわつじん 】 二月果つ 二月尽く (季春)
新暦二月の終わり。短い月が慌ただしく過ぎゆく感慨と同時に、寒さがゆるみ、春本番に向かうほっとした気分もただよう。(角川合本俳句歳時記第四版)
木々の瘤空にきらめく二月尽 原裕
真直なる幹に雨沁む二月尽 福永耕二
二三日葬りに使ひ二月尽 伊藤敬子
光りつつ鳥影よぎる二月尽 小沢明美

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冬から春へ [俳句]

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今日は立春
ブログの更新を休んでいる間に季節は春に変わってしまいました。
俳句はぼつぼつ作ってはいたのですが、なかなか記事にできませんでした。

今日の俳句はは冬の季語『柊挿す』と春の季語『立春』で詠みました。

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柊を挿(さ)して軋む戸両の手で 粋田化石


『柊挿(さ)す』が冬の季語です。節分に、焼いた鰯の頭と柊の枝を挿す風習のことですね。
柊を挿した後軋む重い扉を両手で閉めたという句です。

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柊挿す残りは酒のあてにせぬ 粋田化石


鰯は頭しか使わないので、残った体の部分は酒の肴にしました。

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柊挿す貧乏神を置いたまま 粋田化石


柊を挿すというのは、結界を張って邪気が入り込まないようにすることです。家に貧乏神を置いたまま結界を張ってしまったので、貧乏神が出られなくなってしまった、という句です。

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子午線に柊挿して祈りたし 粋田化石


子午線、つまり北極と南極を結んだ線の上に柊を挿して地球の邪気を払いたいという句です。



立春が洗車に映ゆるボンネット 粋田化石


朝、ガソリンを入れるついでに洗車機で車を洗いました。そうしたら、ピカピカのボンネットに立春の青空が映ってとても素敵な光景でした。

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早起きに立春の月徳とせぬ 粋田化石


早起きして空を見上げたら沈み行く月が見えました。
「徳とする」というのは、有り難いものと考えることです。今日は何か得をしたような気分です。



【 柊挿す ひひらぎさす 】 (季冬)
節分に、焼いた鰯の頭を刺した柊の枝を戸口に挿す風習は全国的に行われている。鬼や邪気が家に紛れ込むのを防ぐ 呪まじな い。これを「 焼嗅やきかが し」といって、鰯の他に葱・ 辣韮らつきよう ・ 大蒜にんにく などの臭いものを挿したり、髪の毛を焼いたりする地方もある。(角川合本俳句歳時記第四版)
烈風の戸に柊のさしてあり 石橋秀野
柊挿す若狭の水の通ふ井戸 沢木欣一
柊を挿し中辺路の茶屋守れる 大橋敦子
柊を挿して寒天小屋閉ざす 野崎ゆり香
柊をさして堅田のまくらがり 大峯あきら
よく掃いてあり柊を挿してあり 山本洋子
誰も来ぬ戸に柊を挿しにけり 岸本尚毅


【 立春りつしゆん 】 春立つ  春はる 来きた る 立春大吉 (季春)
二十四節気は一年を二十四に分けたもので、立春はその一つ。節分の翌日にあたり、新暦の二月四日ごろ。暦の上ではこの日から春になる。寒気のなかにもかすかな春の兆しが感じられる。(角川合本俳句歳時記第四版)
立春の雪白無垢の藁家かな 川端茅舎
立春の米こぼれをり葛西橋 石田波郷
立春の竹一幹の目覚めかな 野澤節子
立春のまだ垂れつけぬ白だんご 中山純子
立春や月の兎は耳立てゝ 星野椿
立春の駅天窓の日を降らし 寺島ただし
春立つや子規より手紙漱石へ 榎本好宏
立春大吉舟屋の前に赤き泛子(うき) 池上樵人

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