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昭和の車 [俳句]

 BS朝日に『昭和の車といつまでも』という番組があります。同じ車に三十年以上乗り続ける持ち主を訪ねて、その人と所有する車を紹介します。私はその番組が好きでよく見ているのですが、ある日いつものようにその番組を見ているときに傍にいた息子が「この人優しそうな顔をしている。」と言いました。
 なるほど、息子に言われてそうゆう視点で見てみると、確かに同じ車に三十年以上乗り続けるドライバーたちは皆さま優しく素敵な顔をされています。私は車だけ見て人は見ていなかったのですね。そうして更に気づいたのですが、その古い車を整備・修理してくれる整備士たちも素敵な表情をしていました。古いものを大切にされる方のお顔はどこか違うのですね。

昭和の車 (1).jpg


三十年を一つハンドル巡る秋 粋田化石


 三十年(みそとせ)の間同じハンドルを握ってまた秋が巡ってきた、という句です。ハンドルなので巡るにしてみました。

昭和の車 (4).jpg


三角窓佛顔にも素風かな 粋田化石


 まだ自動車にダクトや強制送風ファンがなかった時代、自動車についている小さな三角窓を開閉して室内の換気を行っていました。
 素風というのは色の無い風、つまり秋の風のことです。秋らしい晴れた日、古い車の三角窓の奥の優しい顔にも秋の風が吹いているという句です
写真がないと自動車の三角窓だとわからない句でした。


【秋風 あきかぜ】  秋風(しうふう)  秋の風  金風(きんぷう)  素風 色なき風  爽籟(さうらい)  (季秋)
秋の訪れを告げる「秋の初風」から、晩秋の蕭条(しようじよう)とした風まで、秋の風にはしみじみとした趣がある。秋風は古来西風とされてきたが、実際には特に定まった方角はない。金風・素風は、陰陽五行(ごぎよう) 説で、秋は五行の金にあたり、色は白を配するところからきた語。色なき風は華やかな色が無い風の意で、漢語である「素風」を歌語にしたもの。(角川合本俳句歳時記第四版)
秋風の吹きわたりけり人の顔 鬼貫
あかあかと日は難面(つれなく)も秋の風 芭蕉
石山のいしより白しあきの風 芭蕉
物言へば唇寒し秋の風 芭蕉
秋風やしらきの弓に弦はらん 去来
十(とを)団子(だご)も小粒になりぬ秋の風 許六
釣鐘に椎の礫や秋の風 几董
淋しさに飯をくふなり秋の風 一茶
あきかぜのふきぬけゆくや人の中 久保田万太郎
死骸(なきがら)や秋風かよふ鼻の穴 飯田蛇笏
秋風や模様のちがふ皿二つ 原石鼎
ひとり膝を抱けば秋風また秋風 山口誓子
秋風や殺すにたらぬ人ひとり 西島麦南
吹きおこる秋風鶴をあゆましむ 石田波郷
秋風や柱拭くとき柱見て 岡本眸
秋風を二三歩追へり見送れり 神蔵器
どこからも川現はるる秋の風 廣瀬直人
髑髏みな舌うしなへり秋の風 高橋睦郎
もういちど吹いてたしかに秋の風 仁平勝
檻の鵜も鵜籠も秋の風の中 島谷征良
肘あげて能面つけぬ秋の風 小川軽舟
籠らばや色なき風の音聞きて 相生垣瓜人
山荘のけさ爽籟に窓ひらく 山口草堂

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